ヤリ・ヤラズ

昔から、競馬の世界には「ヤリ」と「ヤラズ」という言葉があります。

  • 「ヤリ」とは、勝つこと、1着になるためにあらゆる努力を惜しまないこと
  • 「ヤラズ」とは、逆に勝たない、馬券圏内に入らないように手を抜くこと

勝ちに行く競馬をする「ヤリ」は問題ないですが、意図的に勝たない、馬券圏内に入らないようにする「ヤラズ」は、馬券を買う側にとっては問題でしょう。

しかし、競馬ファンには、「ヤリ・ヤラズ」の判断はゲートが開くまでつかず、しかも返還の対象にはなりません。つまり、いくら事前に勝負気配がみられても、騎手に「ヤラズ」をされてしまうと、成すすべがないのです。

「ヤラズ」はレース中に騎手が判断することは少なく、事前に調教師などから指示が出ていることが多いのです。時には馬主の意向で指示が出ることもあります。ちなみに、誰が見ても明らかな「ヤラズ」行為は、騎手自身の制裁対象になります。例外は、馬体に故障を発生した場合などです。

MEMO
条件馬のなかには、できるだけ多く賞金を稼ぐために、わざと1着にならず2~3着をくり返す馬がいます。これは、馬主の指示であり、上のクラスに上がっても、入線の見込みが薄い馬に対してだされます。これも広い意味で見た「ヤラズ」の一種です。

インサイダー視点のヤリ・ヤラズ

さて、これからはインサイダー視点でのヤリ・ヤラズについて語りたいと思います。昔からある競馬界の闇、都市伝説のひとつとして読み流してください。

ご注意
この記事の「ヤリ・ヤラズ」は、見る人によっては不快な気分になるかもしれませんが、競馬はどこまで行っても公平な勝負でないこともご理解ください。我々は、関係者による調整の一環としてとらえています。競馬に「ロマン」を求める方は、ここから先を読まないことをお勧めします。

追うふり

素人目にあからさまに手を抜いたように見えれば、レース後すぐに審議対象になりますので、実際に行われる「ヤラズ」はもっと巧妙です。

必死に馬を追っているように見えて、実際にはハミをかけずに手だけ動かす。

ハミ

馬は騎手と手綱を通じて意思疎通を図ります。この時、馬の口にきちんとハミがかかってないと、騎手からの指示が正しく伝わりません。ハミとは馬の頭にかぶせる馬装具で、金属製の金具が口の中に入っていて、力加減が馬に伝わる仕組みです。

馬群に埋もれさせる

どの距離のレースでも、4コーナーを立ち上がって、直線に向かいます。この時、馬がひしめく内埒沿いに突っ込ませ、伸び足を殺してしまう方法です。

このケースは、「馬群の前が開かなかった」と言い訳が効きやすいので、よく使われます。

また、1着ではなく、3着に落としたい時などもこの手がよく使われます。実際に勝負気配の高い馬は、直線で他の馬に進路をふさがれないように外に持ち出しているケースが多いです。

意図的な落馬

競走馬にとって、人間の都合なんて関係ありません。
いくら関係者から「ヤラズ」を指示されていても、馬がその気になっていては、指示通りの着順を狙えません。

そこで騎手が行う最終手段が、意図的に馬から飛び降りる「落馬」です。

業界用語では「降りる」というそうですが、明らかに事故があって落馬する場合と異なり、騎手が意図的に飛び降りるケースは「ヤラズ」に入ります。

ヤラズの落馬の場合は、騎手は十分に安全を確保したうえで飛び降りるので、落馬後も騎手は無傷なケースが多いです。

2002年 1番人気ノーリーズンの「降りる」

なぜ、ヤリ・ヤラズが必要なのか?

ここまで読み進められた方は、疑問に思うでしょう。

「なんで、競馬にヤリ・ヤラズが必要なのか?」

勝ちにこだわる「ヤリ」は問題ありません。問題は勝負気配があるにもかかわらず行われる「ヤラズ」のほうです。競馬が競走馬の能力を競うだけのものであれば、話は単純です。力のある馬が勝ち、ダメな馬はどんどん淘汰されるだけで済みます。

しかし、競馬はギャンブルとしての側面があり、持ち時計やレースっぷりのいい馬だけが次のレースを勝ち上がるのであれば、かけ事として成立しません。誰もが単勝1.2倍のガチガチ馬券で決まるより、そこそこ美味しい中配当、できれば万馬券を手にできればうれしいでしょう。

配当のゆらぎというべき「波乱要素」を、JRA自身も仕組みとして用意しています。それがコースの形状であったり、負担重量、枠順、レースの競走条件であったりします。内埒の移動柵によって、意図的に最内にグリーンベルトとよばれる高速トラックを出現させることもあります。

ヤリ・ヤラズは、秘密裏に行われてる「波乱要素」のひとつです。
そこに、どういう意図、やり取りがあったかまでは知りません。

しかし、ヤリ・ヤラズの情報はインサイダー情報として、馬主などに伝わり、これが異常オッズの原因になることがあります。

だから、異常オッズを利用するシンドロームでも、その存在を認識しておく必要があるのです。

ヤラズの参考資料

ヤリ・ヤラズは都市伝説です。でも、さまざまな情報源をあたると、その痕跡はいくつも見えてきます。最後に、まだ閲覧可能な資料を紹介しておきます。

書籍「八百る騎手」 安田博康著

元地方競馬のリーディングジョッキーが書いた書籍です。2007年に東邦出版から出版された書籍で、安田騎手の現役時代の「ヤリ・ヤラズ」について書かれています。

この書籍の評価はふたつに分かれるでしょうね。競馬が常に公平であると考えてる人にとっては、嘘くさい本にしか思えないでしょう。

なお、今でもAmazonなどで中古本として入手可能です。ほぼ捨て値に近い値段なので、興味のある方は、お近くのブックオフなどを探してみてください。

エキシビションマッチにおける追う振り

第1回ジョッキーマスターズは、2007年4月に東京競馬場のスタンドの完成を記念して行われた「エキシビションレース」です。このレースは、引退した騎手を集めて行われたレースであり、馬券も販売されてないことからわかりやすい「ヤリ・ヤラズ」が行われたレースです。

このレースのVTRは、YouTubeにもあがっていますが、アップロードされている動画の解像度では、あきらかにハミがかかってないシーンが確認できませんでした。

なお、放送当時、グリーンチャンネルの生放送では、わかりやすいケースとして確認できました。